創立60周年記念式典校長式辞

本日ここに、福岡県立朝倉東高等学校創立60周年記念式典を挙行するにあたり、同窓会、PTA、振興会の役員の方々の御臨席を賜り、心より御礼申し上げます。

本校の歴史を辿ってみますと、明治43年に創立された朝倉郡立朝倉女子実業学校を前身として、福岡県立朝倉高等女学校の時代を経て、その後、県立朝倉高校から分離独立し、地域の方々の熱い要望に応え、昭和32年に、「明朗・自律・礼儀」を教育目標に掲げ、県立朝倉東高等学校として誕生しました。

新しい校舎に移る際の記録が残されています。その一部を紹介します。「引越しは全く見事な全校一致で遂行された。先生も机を持ち、生徒も机を持った。事務の先生は鋸を持ち、仕事の差配をしながら、独楽のように走り回った。先生も生徒も一緒になって掃除をした。一緒になって野球をしたり、テニスをした。そして一緒になって勉強した。そこには溌剌とした毎日毎日の生活があった。期待があり、喜びがあった。校名、校章は先生、生徒から募集された、多数の応募の中から、朝倉中央高等学校、甘木高等学校、朝倉東高等学校が選び出され、教育委員会と協議して朝倉東高等学校に決定した。」60年前の記錄は、私たちに創立当時の先輩方の熱い思いを伝えています。

この先輩方の思いを知り、今の朝倉東高校の在り方、そして今の私たちの在り方を考える。本日の式典の意味はここにあります。

本校が誕生した昭和32年、西暦1957年は、どのような時代だったのでしょうか。ようやく第二次大戦における敗戦から立ち直り、暮らしも少しずつ豊かになり、「三種の神器」と呼ばれる、電気冷蔵庫、電気洗濯機、テレビが、家庭に普及し始め、この年、東海村に第一号原子力発電所が完成しました。前年の1956年に日本は国連への加盟を認められ、翌年の1958年には、東京タワーが完成しています。

このような時代を背景として、昭和32年に設立された本校は、以降も、時代の変化と地域の要請に応じた学科の再編を重ね、平成15年度からは総合ビジネス科、ビジネス情報科、普通科の三学科からなる総合学科として現在に至っています。インターンシップやジョブシャドウイング。今年12年目を迎える「E―SHOPあさくら」での地域企業と連携したオリジナル商品の開発と販売。各部活動における輝かしい成果やボランティア活動への取組。これらに本校の着実な足跡を見ることができます。設立より今年で60周年、卒業生も14905名を数え、多くの有為な人材が各方面で活躍し、高い評価を受けています。

これはひとえに、歴代の諸先生方、そして先輩生徒諸君のたゆまぬ努力、父母教師会、同窓会、振興会の皆様方のご支援、ご努力の賜物であり、そして、その積み重ねの上に、地域からの信頼があり、また、在校生の就職実績があります。本校を代表して深く感謝を申し上げます。

在校生の皆さん、本日は、本校草創期の歴史を振り返り、今後の新たな創造発展に向けて一歩を踏み出す日です。本校の建学の精神である「明朗・自律・礼儀」、この校訓の由来するところは、「1 清純・明朗」「2 自由と規律の調和」「3 相互敬愛と協力」であり、これを簡潔にしたものです。本校の源泉を探り、その由来に思いを馳せ、そして現在の自分を振り返ることは、記念すべきこの時に最もふさわしいことではないでしょうか。

これまで諸先輩方が築き上げられた伝統と信頼を皆さんが引き継ぎ、本校生としての自信と誇りを持って、校歌にも謳われていますように「描かん希望 若人の道」の精神を発揮し、志の高い人間へと成長することを心から願っています。

最後に、本日のこの式典の場において、私たちがどうしても考えなければならないことがあります。九州北部豪雨についてです。7月5日の九州北部豪雨により、朝倉市、東峰村は甚大な被害を被りました。7月5日の降雨量については、朝倉市、東峰村を中心とした地域において、9時間で774mm、という雨量を観測しております。それまでの我が国の観測史上最大の記録が、12時間で707mm、であったことと比べますと、まさに想定外の降雨量でした。そして、想定外の降雨量は、想定外の災害をもたらしました。本校においても被災した生徒が多くいます。

このような状況において、多くの生徒が、それぞれ自分にできることを自主的に考え、行動してくれました。そのことに対して敬意を表すとともに感謝いたします。自分に何ができるかを考えて、それを行動に移すことはとても素晴らしいことです。相手を思いやる気持ち、人のために何とかしなければという気持ちを大切にしてください。

また、これから何年もかかると思われる故郷の復興への道のりにおいて、人としてどのように関わるべきか、地域の人々から愛されて成り立っている本校が今後どのようにあるべきかについて、創立60周年という大きな節目の本日、在校生、職員一人ひとりに思いをめぐらせてほしいと思います。

終わりに当たり、本日御臨席の皆様方、並びに創立以来本校の充実・発展にご尽力いただきました関係各位に対し、改めて深甚なる敬意を表しますとともに、今後とも一層のご支援を賜りますようお願い申し上げ、式辞とといたします。

平成29年10月21日

福岡県立朝倉東高等学校 校長 髙松 大輔

2017年10月21日